Amazonや楽天市場などをはじめとした大手ECポータルサイトを皮切りに、多くの企業が顧客データ分析に基づく高度なパーソナライゼーションを自社のサービスに導入し始めました。データ活用の必要性を問う時代は過ぎ去り、「活用することを前提」として、「いかに効果的に活用するか」を考える段階に差し掛かっています。

しかし、そうした変化を漠然と意識してはいても、実際にどんなデータをどう活用するのかと改めて問われると、明確に答えを出せない人も少なくないのではないでしょうか。

CRMの導入・運用においても同じことが言えますが、これからの時代により効果的かつ効率的にCRMを実践していくうえで、「データ」というものの本質を理解しておくことは非常に重要です。

この記事では、CRMで取り扱う顧客データの種類と性質、および具体的な使い分け方について見ていきましょう。

マーケティングデータの2つのタイプ

マーケティングで活用されるデータは、大きく2つのタイプに分類することができます。
ひとつは定量データ、もうひとつが定性データです。

あまり聞きなれない言葉かもしれませんが、マーケティングにおいてデータを取り扱う際には、この2つのタイプの違いを理解しておくことが重要です。以下では、定量データと定性データ、それぞれの概要と収集方法、活用の仕方について説明していきます。

定量データの収集と活用

まず、定量データとは何らかの形で数値化して把握することが可能なデータです。

顧客の住所、年齢、年収、家族構成といった顧客情報(顧客属性情報)、顧客の購買履歴、Webサイトのアクセスログから取得される行動履歴などが定量データに当たります。

「住所や家族構成を数値化できるのか?」と疑問に思われるかもしれませんが、関東、関西、中部のようなエリアや東京都、大阪府、愛知県などの都道府県、父、母、子供の人数などの一定の指標で集計し、「関東在住者が母集団の8割を占める」「夫婦と子供1人のみの核家庭は全体の7割」といった形で取り扱うことが可能です。

このような顧客情報は、一般にサービスへの会員登録、顧客アンケートなどを経て収集されます。また、購買履歴は販売管理システム等に蓄積された受注履歴から、行動履歴はWebサイトへのアクセスログなどから抽出します。

定量データの特徴のひとつとして、個々のデータそのものから深い洞察を得るのは一般に難しいという点を挙げることができるでしょう。例えば、「顧客のAさんの現住所は東京都板橋区」というデータそれ自体から分かるのは、「Aさんが東京都板橋区に住んでいる」という事実でしかありません。

しかし、こうしたデータを大量に収集し、集計したり平均したり、あるいは時系列に並べて比較したりすることによって、そこから浮かび上がるパターンや傾向を把握することが可能となります。

「どの商品がよく売れているのか」「誰がよく買っているか」「何月に売上が増加するか」……といった傾向を把握したい場合には定量データが役立ちます。

定性データの収集と活用

これに対して定性データは、一律に数値化することができない、あるいは数値化することが困難なデータです。

お客様センターに蓄積された問い合わせの履歴や、お客様の声、クレーム、SNSに投稿された文章といった、自然言語で書かれた非定型的なテキストデータなどが定性データに分類されます。

定性データは定量データのように手軽に加工して利用することができない反面、個々のデータ自体からなにがしかの知見を得られる場合が多いといえるでしょう。「顧客はなぜこの商品を買ったのか」「サービスのどんなところが気に入っているか(あるいは気に入らないか)」「何が不満で、どう改善してほしいと思っているか」といった、定量データからは読み取りづらい「深い洞察」のヒントとなります。

昨今、人工知能技術の一分野である「自然言語処理」が目覚ましく進歩し、定性データの分析・活用に注目が集まっています。また、機械学習、深層学習といった技術を応用し、一見単純な定量データの集合体から高度な洞察を導き出すことも可能となってきています。

データの性質を理解して適切な活用を

以上、顧客データを2種類のタイプに分けて、それぞれの特徴や性質をご紹介しました。
やや荒っぽい分類ではありますが、What(何が)、When(いつ)、Where(どこで)といった要素を導き出すには定量データ、Why(なぜ)やHow(どうやって)を導き出すには定性データが活躍すると考えてもよいかもしれません。

いずれにせよ定量データと定性データのどちらも重要なデータであり、両者の間に優劣はありません。それぞれの特性を理解したうえで、その時々の目的に応じて適切に使い分けましょう。

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