「たったひとつのシンプルな質問で、顧客の自社に対するロイヤルティを正確に把握することができる」と言われたら、どう思いますか? それを可能とするのが、昨今注目を集めている「ネットプロモータースコア」という指標です。

この記事では、ネットプロモータースコアに関する基本的な知識とともに、活用するうえでのポイントについてお話します。

ネットプロモータースコアとは

ネットプロモータースコア(Net Promoter Score®/NPS®)は、フレデリック・ライクヘルドが提唱した顧客ロイヤルティを計測するための指標のひとつです。2003年、ハーバード・ビジネスレビューに掲載された「The One Number You Need to Grow」という論文の中で初めて使用され、「たったひとつのシンプルな質問で顧客ロイヤルティを推し量ることができる新しい指標」として一躍注目を集めました。

企業が継続的に利益を上げていくうえでは、顧客との間に良好な関係を構築し、少しでも長く自社の製品・サービスを使い続けてもらうことが重要です。従来、顧客が自社の製品やサービスにどの程度満足しているかを推し量るための指標として「顧客満足度(Customer Satisfaction/以下、CS)」が一般に用いられてきましたが、ライクヘルドは著書『顧客ロイヤルティを知る「究極の質問」』の中で、従来の顧客満足度調査では不十分であるとして、ネットプロモータースコアを提唱しています。

昨今ではAppleやAmazon、ザッポス、Google、Facebook、ナイキ、Airbnbといった顧客志向の強い企業を中心として、ネットプロモータースコアの採用が進んでいます。

参考:
The One Number You Need to Grow|Harbard Business Review

顧客ロイヤルティを知る「究極の質問」 (HARVARD BUSINESS SCHOOL PRESS) / フレデリック・ライクヘルド (著), 鈴木 泰雄 (著), 堀 新太郎 (著)

※「Net Promoter Score」および「NPS」は、ベイン・アンド・カンパニー、フレデリック・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズの商標です。

ネットプロモータースコアの計測法

ネットプロモータースコアを計測する際には次のような質問を顧客に対して投げかけ、結果を0~10の11段階で評価してもらいます。

「当社のことを知人に勧める可能性がどれだけありますか?」

この回答が0~6ならば「批判者」、7か8なら「中立者」、9か10なら「推奨者」と分類します。
「批判者」は何らかの不満を抱いている批判的な顧客で、放置した場合は周囲に対して悪評を広めるおそれがある層です。「中立者」は自社に対して基本的には満足している顧客の層ですが、何かきっかけがあれば競合他社に流れてしまう懸念があります。「推奨者」は自社の製品やサービスを積極的に他者に勧めたいと考えている層で、自社に対するロイヤルティの高い顧客だといえるでしょう。

このように分類を行ったうえで、調査時の母集団における「推奨者」の割合から「批判者」の割合を引いた数値を、最終的なネットプロモータースコアとして採用します。例えば、1000人の顧客を対象として調査を実施し、批判者が200人、中立者が500人、推奨者が300人という結果になった場合は、批判者が20%、中立者が50%、推奨者が30%で、ネットプロモータースコアの値は30-20=10%となります。

ネットプロモータースコアの活用

ネットプロモータースコアを計測し、その時点における顧客ロイヤルティが低いことが明らかになった場合は、それを高めていくための対策を打っていくことになります。このとき、顧客が自社のどんな点に対して不満を抱いているかが分からなければ、対策の打ちようがありません。そこで、ネットプロモータースコアの計測時には、前述のシンプルな質問とあわせて、

「どこがどうなれば知人に勧めたいと思いますか?」

といったアンケートをあわせて実施する手法が有効です。アンケートで出た結果をもとに課題解決の施策を実施し、検証を繰り返していくことで、顧客ロイヤルティを高めていくことが可能となります。

ひとつ注意が必要なのは、ネットプロモータースコアの評価基準は業種・業界によっても異なり、「○%以上ならよい、○%以下なら悪い」というように一概に判断することはできないという点です。ネットプロモータースコアを採用する場合、業界の平均値や同業他社のスコアと比較するなどして、自社が現在どのような状況にあるのかを正しく認識したうえで、正確な評価を行うことが大切です。

ネットプロモータースコアと顧客満足度(CS)の使い分け

以上、ネットプロモータースコアについての基礎知識、および活用の方法をご紹介しました。

前述のとおり、ネットプロモータースコアは「CSに代わるもの」として捉えられている向きがありますが、厳密にいうとCSとネットプロモータースコアは、有効な利用シーンが若干異なります。長期的な顧客満足・顧客ロイヤルティを測る指標としてはネットプロモータースコアが有効ですが、特定の商品やサービスに対する短期的な満足度を測りたい場合には、従来の顧客満足度(CS)のほうが有効な場合もあるのです。

両者の特性を正しく理解し、適切に使い分けながら総合的な改善策を出し続けることが重要だといえるでしょう。

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