ホテル・旅館の生き残り戦略を握る顧客関係性管理

006年~2012年頃にかけては世界的な景気の後退や円高などの煽りを受けて、宿泊業界もかなりの苦戦を強いられました。
現在は訪日外国人観光客の増加などを背景に、業界動向は再び上向いてきています。一方で、2020年の東京五輪に向けて新たなホテルや旅館の開業が進められており、市場内におけるシェアの奪い合いが激化していくことも予想されます。 

ライバルに打ち勝ち、宿泊客を獲得し続けるためには、顧客との繋がりを強めていく必要がありますが、そのための重要な武器となるのが「データの活用」です。
この記事では、ホテル・旅館の事業経営におけるデータ活用について考えてみましょう。

「新規予約獲得」のために考えるべきこと

事業を継続的に成長させていくためには、継続的に新規顧客を獲得し続ける取り組みが不可欠です。
新規顧客からの予約を効率良く獲得するためには、自社の施設の特徴を把握・理解し、これに基づいたマーケティング戦略を展開していく必要があります。
同じホテルといっても、地方の観光地のホテルとオフィス街の中心にあるホテルとでは客層は大きく異なります。また、同じ地域の観光地であっても、立地や施設の特徴により客層の違いが生じてくることもあるでしょう。 

自社の施設にはどんな特徴があり、その地域にはどのような顧客が訪れるのか。観光客が多いのか、ビジネス利用が多いのか。年齢や性別の分布はどうなっているのか-そういった情報は地域のコミュニティ誌などから得ることもできますが、過去の宿泊客データの分析結果から傾向を導き出すことも可能です。主要なターゲット顧客像を明確にしたうえで、マッチするサービスやプラン、料金設定を設計することが重要です。

「また来たい」と思ってもらうために

宿泊業界においても、リピーターの増加と既存顧客の維持は重要課題に位置づけられます。このため、前述の新規顧客獲得の取り組みとあわせて、既存顧客の維持のために、顧客満足度の向上、定期的な再来店促進といった活動を実施していく必要があります。 

リピーターを増やすには、新規顧客に「居心地がよい」「また訪れたい」というポジティブな印象を持ってもらわなくてはなりません。そのために重要な役割を果たすのが、アンケートやクチコミ情報サイトに投稿される顧客からのコメントです。また、最近では顧客がSNS上にシェアする情報などもサービス品質向上の参考となります。 

こうした情報をこまめに収集・蓄積することで、「顧客に喜ばれるサービス」が何であるかが明確になっていきます。「丁寧な接客」や「まごころを込めたおもてなし」はもちろん大切ですが、もはや当たり前のことであって、あくまでもスタート地点。加えていかに付加価値を提供できるかが、勝負の鍵といえるでしょう。

「顧客と繋がりつづける」ことの重要性

訪れた顧客に良い印象を持ってもらうことができたら、次に「繋がり続ける」ための取り組みを行います。
都会のビジネスホテルは別として、宿泊施設というのはレストランやファッションショップなどとは異なり、そう頻繁に訪れる場所ではありません。良質なサービスを受けた顧客は、訪問した直後はそのことを覚えていてくれるかもしれませんが、その記憶は時とともに薄れていってしまいます。 

このため、来店の御礼をフォローメールで送る、適切なタイミングを見計らって再来店を促す、観光地の宿泊施設であれば地元の情報をメルマガで送る、といった活動を展開します。

事例紹介
Jamaica Inn
カリブの小さなホテルである「Jamaica Inn」は、アットホームさを売り物に堅調なビジネスを営んでいましたが、不景気で顧客が減少したことを受けて対策に乗り出しました。
CRMを導入し、それまでに蓄積されていた8000件にのぼる顧客データ(顧客4000件/旅行エージェント4000件)を活用してEメールマーケティングに着手します。ホテルやスタッフの紹介、限定プランの紹介などを含むニュースレターや電子ポストカードを定期的に送信する活動を行いました。
メール送信にあたっては、顧客との関係性強化を再優先課題として、ハウスリストを既存顧客、旅行エージェント、WEBサイトを訪問した見込み顧客に分割。それぞれに対してメール文面等を個別にアレンジするなどの工夫をこらしたといいます。このほか、Webサイトを一新したり、ソーシャルメディアのアカウントを増やしたりといった施策も行い、結果的に収益が52%アップしました。

戦略的なホテル・旅館経営はデータの蓄積・分析から

このように、ホテルや旅館の経営においては、新規顧客を獲得し、獲得した顧客をリピーターとして育成するサイクルを回していくことが重要です。 

その際に注意したいのは、「感覚だけで判断を下さない」ということ。データをもとに厳密な分析を行い、事実ベースで戦略を考えたうえで、「現場の勘」や「ノウハウ」を加えることが成功への道です。 

顧客のデータやアンケート・クチコミなどの情報を管理し、必要な時にスムーズに使用できる体制を整えておくことが、これからのホテル・旅館経営ではますます重要になっていくのではないでしょうか。

参考サイト

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