店舗を持たず、TV・Webサイト・カタログ・チラシなどのメディアで顧客に商品を周知し、電話や申込書、インターネットなどを利用して商品の注文を受け付ける通信販売(以下、通販)。

この記事では、顧客データを活用して通販ビジネスを効率良く運営していくための基本的な考え方を紹介します。

「誰に」「どうやって」アプローチすべきか?

通販ビジネスでは、「無料サンプルを提供して新規顧客を獲得し、商品を購入してもらう」というビジネススキームがしばしば用いられます。このように「はじめに種をまいてから刈り取る」構造のビジネススキームの場合、「仮説」「計画」「実行」「検証」「対策検討」(仮説およびPDCA)のサイクルを繰り返して精度を高めていくことが特に重要だといえます。

実施するにあたって重視すべきことはいくつかありますが、第一に、「誰に」「どんな経路で」アプローチするのかを慎重に設計する必要があります。

販促活動を展開する際には「ひとりでも多くの人にアプローチできたほうがよいのではないか」と考えがちです。しかし、最終目的が「本商品を購入してもらうこと」にあることを忘れてはいけません。自社商品のターゲット顧客層をきちんと把握し、ターゲットに届く媒体を利用したほうがよいでしょう。

また、無料サンプルを配布する場合は、「引き上げ率」を検討することも大切です。

どうすれば「引き上げ率」が上がるのか?

無料サンプルを請求した顧客に本商品を購入してもらうことを「引き上げ」といいます。「引き上げ率」とは、無料サンプルを提供した顧客のうち、一定期間内に本商品を購入してくれた人がどれだけいたかを示す割合のことです。

100人に無料サンプルを配布し、そのうちの20人から本商品の注文があった場合、引き上げ率は20%です。

通販ビジネスにおいては、引き上げ率をいかにして高めていくかがひとつのポイントだといえるでしょう。

新規顧客引き上げのための活動には、DMの送付、コールセンターから顧客へ電話をかけるアウトバウンド、メール配信などがあります。こうした活動は、一律に実施するだけでは高い効果は望めません。

引き上げ率を向上させるには、自社の商品や対象顧客層に合った効果的な施策を打つことが大切です。たとえば、スイーツやドリンクといった嗜好品や化粧品の場合は、割引クーポンの配布、「初回限定のお得なセット」をメールですすめるなどのキャンペーンが効果的です。デオドラント商品のようなお悩み商材の場合は、適切なタイミングのアウトバウンド実施が引き上げ率向上に貢献します。オペレーターとの1対1の対話が安心感を与え、購入を迷っている顧客の背中を押す役割を果たすのです。

また、こうした一般的な理論とあわせて、自社の顧客独自の反応パターンを分析することも大切です。過去に実施したキャンペーンへの反応などを分析し、各顧客層にどのような施策が有効なのか、サンプル請求から何日目に初回の施策を打つのがよいか、といった傾向を割り出すことができます。

リピーター育成のために考えるべきこと

通販ビジネスの要ともいえる「リピーター」の育成においても、データ活用は重要な役割を果たします。

無料サンプル請求から初回の本商品購入につなげたものの、その先のリピート率がなかなか上がらない、という課題に悩む通販事業者は少なくありません。このような場合、現場の感覚だけに頼って動くのではなく、過去の統計データをもとに仮説を立て、なぜリピートにつながらないのか、売上に結びつかない原因を検証し、施策に移すことが重要です。

リピートした顧客とそうでない顧客をグループ化し、それぞれの属性や行動特性を詳細に見ていくことで、特徴や傾向を割り出せる可能性があります。それをもとにアクションを考えていくことで、施策から上がる成果をより高めることができるでしょう。

ネット通販とカタログ通販

データを検証する過程において、検討したい事項のひとつは、ネット通販とカタログ通販をそれぞれどう活用していくかということです。

現在、カタログ通販からネット通販に移行する消費者が増えていますが、シニア層の一部などでいまだにカタログ通販を好んで利用する人もいます。そうした「年齢」という属性に着目した販売方法を考えてカタログを制作している会社もあります。

  • ■就労者以外のシニア層に着目した「日本直販」

トランスコスモス株式会社が運営している通販ブランド「日本直販」は2017年5月、「70歳からの心豊かで快適な生活」を応援する通信販売カタログ「楽歳(らくさい)」を創刊しました。70歳からの暮らしが、もっと「楽しく」「楽になる」という意味をこめたこのカタログは、シニア層の暮らしをサポートするアイテムを紹介しています。

これまで開拓があまり進んでいなかった、非就労層・介護予備軍などのシニア市場に着目した意欲的なカタログです。特集ページや商品ページには、紙のカタログならではの「縦書きの文章」を入れることで、シニア層向きの落ち着いた雰囲気を演出しています。

もちろん、一般的なネット通販の商品ページも、テキストや画像の差し替えが容易であったり、クリックボタンを設けたりするといったさまざまな利点があります。しかし、紙のカタログならではの利点をいかす方法も、ターゲット属性によっては有効といえるでしょう。

このほか、ネットと紙カタログをうまく組み合わせて活用している会社もあります。

  • ■ディノス・セシール

フジサンケイグループの通販会社、ディノス・セシールは、通販業界におけるネット通販の勢いが強まる現在も紙媒体の強さを認め、紙カタログとネット通販の両方をうまく組み合わせて使うという手法をとっています。

大きなカタログを発行したときはECサイトでも販促をかけるなど、紙とデジタルの施策を連携させています。ECサイトにおける顧客の行動に対して、デジタル以外のアプローチも展開。ECサイトの販売ページでカートに入れたが購入しなかった顧客にダイレクトメールを送りました。その効果は、メールマガジン購読のみの顧客よりも購入率が約2割増えたという結果に現れました。

このように、いまだに重要な役割を果たす紙カタログですが、そのつくり方に迷ってしまう……という企業もあるでしょう。以下の記事では「紙のカタログだからこそできるビジュアル表現」や「注意したいポイント」など、売れる通販カタログをつくるコツを紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。

3つの課題解決で“売れる”通販カタログを作る!

PDCAの繰り返しが勝利への近道

顧客の属性や活動履歴、販売促進活動の記録、といったデータをもとに戦略を考えていくことが、通販ビジネスを成功に導く秘訣です。ネット通販と紙カタログそれぞれの売上動向ついてのデータも有効に活用しましょう。

データの活用が重要であることはどんなビジネスにもいえます。データにもとづきPDCAのサイクルを繰り返して精度を高めていくことが、特に重要といえるでしょう。

(2019年5月更新)

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