ビジネスの継続的な成長には、新規顧客を獲得する一方で、リピート顧客を増やしていくという両面での取り組みが必須です。特に、化粧品や健康食品、ペットフードといったリピート商材を販売するビジネスにおいて、リピート顧客の育成は大きな課題であるといえるでしょう。

この記事では、リピート顧客を育てるために不可欠な「顧客の離反防止」と「休眠顧客の掘り起こし」においてまずやるべきことや、休眠顧客へのアプローチ方法を考えます。

「離反防止」と「休眠顧客の掘り起こし」

顧客は「見込み顧客」「初回購入者」を経て、「リピート顧客」へと成長しますが、このリピート顧客がビジネスの成長にとって大きな役割を果たします。リピート顧客はビジネスの利益率を高めてくれると同時に、商品やサービスを潜在顧客に広める「広告塔」となる可能性を秘めた、ありがたい存在でもあるのです。

リピート顧客獲得・維持のための取り組みとして重視されるのが「顧客の離反防止」と「休眠顧客の掘り起こし」の2つの施策です。

「顧客の離反」とは、商品やサービスを購入してくれていた既存顧客が自社を「見切って」他社に乗り換えてしまうことをいいます。また、過去に自社の製品を購入してくれたことがあるものの、長期にわたってリピートがない顧客を「休眠顧客」と呼びます。

ターゲットにする顧客を絞り込む

離反防止と休眠顧客の掘り起こしに取り組むにあたっては、対策を打つ対象となる顧客を事前に絞り込んでおくことが重要です。一口に「離反顧客」、「休眠顧客」といっても個別に見ていくと属性はさまざまであり、その全てに対して一様にアプローチするのは賢いやり方ではありません。限られた予算のなかで最大の効果をあげるためには、「自社にとって価値のある顧客」とはどのような顧客なのかを見極める必要があります。

「価値ある顧客」の定義は、業種・業界、ビジネスの形によって異なります。ジュエリーを販売するECサイトなら、高額商品を何度も購入してくれた顧客が優良顧客といえるでしょうし、オンラインゲームを運営する企業なら、ゲーム内の課金アイテムを頻繁に購入してくれる顧客に高い価値をつけるでしょう。

まずは自社の商品やサービスの性質を踏まえて「価値の高い顧客」の定義を明らかにしたうえで、定義に合致する顧客を絞り込んでいきます。

価値の高い顧客が誰かを見極めることができたら、そのなかで具体的に「誰」を対象とするかを考えます。離反する確率が高そうなのは誰で、休眠顧客のなかで掘り起こし対策にもっとも反応してくれそうなのは誰なのか、顧客一人ひとりの属性や過去の行動履歴といったデータの分析をもとにターゲットを抽出します。たとえば、かつては頻繁に購入してくれていたのに最近徐々に頻度が減ってきた、という顧客は離反の恐れが高いといえるかもしれません。また、休眠前に1度しか商品を購入してくれていない顧客より、2度、3度とリピートしてくれた顧客のほうが、掘り起こし対策の効果も出やすいと考えられます。

どのような対策を打つべきかを考える

ターゲットを抽出することができたら、次は抽出したターゲットに対してどのような対策を打つべきかを検討しますが、ここでも顧客属性や行動履歴をもとに、最適な対策を講じることが重要です。抽出したリストに対して一律にDMを送りつけるようなことをしていては、せっかくの分析が無駄になってしまいます。

顧客の離反防止策を立てる場合は、ターゲットとなる顧客がなぜ離反しそうなのか、どうすればそれを食い止めることが出来るのかを論理的に検討します。また、休眠顧客の掘り起こしキャンペーンを展開するのであれば、どのような方法でアプローチすればターゲットに届きやすいのか、どんなキャンペーン、コピーライトがターゲットの心に刺さるのか、といったことを考える必要があるでしょう。

データの蓄積と分析に欠かせない「CRM」

こうした一連の取り組みを行ううえで、「CRM」が重要な役割を果たします。

顧客一人ひとりにIDを割りあて、属性や行動履歴を一元管理しておくことで、前述のような分析や対策の検討に役立てることができます。

顧客の離反防止や休眠顧客の掘り起こしへの取り組みが行われるのは、通常はビジネスがある程度軌道にのってからの話になりますが、その時が訪れてからCRMを導入していては手遅れとなってしまいます。CRMを早期に導入し、継続的にデータを蓄積していくことが非常に重要だといえるでしょう。

【あわせて読みたい!CRMについて詳しく知りたい方はこちら】
CRM(顧客管理)とは?CRMの内容や導入すべき理由を徹底解説

休眠顧客を復活させるには?

1度商品を購入してくれた顧客に対しては、なんとか離反防止に努めたいものです。しかし、顧客側の事情で商品購入をストップしてしまうこともあり得るでしょう。そのようなときには、CRMのデータを活用して、休眠顧客を復活させる方策を練る必要が出てきます。ここでは、具体的な方法をご紹介しましょう。

休眠の理由を分析

1度は商品を購入してくれた顧客が、なぜ購入をやめてしまったのでしょうか。そこにはさまざまな事情が隠れているはずです。

初回の購入後、購入がストップ

単純な理由としては、「初めに購入した時は、割引率が高かったり、他店でも使えるポイントが付与されたりなど、初回購入限定の“特典”がついていたので、それが目当てだった」といったものがあるでしょう。つまり、その商品やサービスへの興味がそれほど高くなくても、「安いからお試しのつもりで」初回の購入に至ったものの、通常の価格は高すぎるのでリピートしないというパターンです。

同じように、初回購入後にリピートがないパターンでも、初回の特典が特になかった場合は、購入をやめた理由は別のところにあると考えられます。この場合、「商品に満足できなかった」可能性が高いといえます。

複数回の購入後、購入がストップ

同じ商品を複数回、あるいは長い期間にわたり継続して購入してくれていたのに、ある時から購入記録がなくなってしまったというパターンでは、別の理由が考えられます。

値上げを行った直後に購入がストップしたのであれば、価格のアップが原因である可能性が高いでしょう。特に値上げはしていないのに顧客が離反した場合は、「同価格帯の他社製品に興味が移った」「顧客がその商品を必要としなくなった」といった理由が考えられます。

顧客が「同価格帯の他社製品を選ぶようになった」ということであれば、「似たような価格なのに他社製品のほうが品質やデザインが良い」といった理由があったのかもしれません。また、「肌質が変わってオイリー肌ではなくなってきた」「ペットが年を取って、硬いペットフードが食べられなくなった」など、顧客側の事情が変化した場合には、今まで購入していた商品が不要になるでしょう。

こうした「休眠の理由」については、CRMデータを活用することで分析が可能になってきます。販売時に特典をつけていたか、いつ値上げをしたか、といったデータと顧客が購入を始めた時期や離反した時期などのデータを照らし合わせることで、理由を推測できます。

休眠顧客へのアプローチ方法

休眠の理由が分析できたら、先に述べたとおり、まずは再度購入してくれそうな顧客にターゲットを絞り、その後にアプローチを開始します。代表的なアプローチ方法に、次のようなものがあります。

メール

一般的によく行われるのが「Eメールの送付」。コストを低く抑えられるという利点があります。自社の商品やサービスに対して再度興味を持ってもらうために、特典付きのキャンペーンやセールの告知を行うなど、メリットが感じられる内容のメールを送ります。CRMの機能を利用してセグメント(休眠の理由別など)ごとにメールやステップメールを自動配信すると、効率的です。

ただし、Eメールは開封されない場合も多いため、これまでと件名を変える、目新しい情報を配信するなどの工夫が必要です。

電話

コストはかかりますが、メリットも多いのが、「電話によるアプローチ」です。あまり何度も電話を掛けると「しつこい」と思われる可能性もありますが、「○○の説明会のご案内」「特別セールへのご招待」など有益な情報を知らせるかたちであれば、話を聞いてくれる可能性が高まります。

また、顧客と直接コミュニケーションを取るなかで、「商品について不満に思っている点」を率直に語ってもらえる場合もあります。すなわち、「休眠の理由」をさらに詳しく知るチャンスが得られるため、その後の販売戦略を立てる際に、より精度の高いプランを作ることができるでしょう。

DM

DMも休眠顧客を復活させるための一般的な方法ではありますが、Eメールよりもコストがかかります。また、せっかくコストをかけて作成・送付しても、開封してもらえない可能性もあるため、より慎重にターゲットを絞る必要があります。また、開封してもらった場合にそのまま放置されないよう、「アンケートにお答えいただいた方に、クーポン券をプレゼントします」といった特典を含めるなど、次のアクションにつなげる工夫が必要です。
休眠顧客を呼び戻すための効果的なDM設計とは

手紙

「手紙を送る」というのも、有効なアプローチになり得ます。特にBtoCでは、直筆の手紙を送ることで、より「自分に向けられたメッセージ」という印象を強められる可能性があります。しかし、直筆のメッセージを書くというのは時間がかかる方法であり、顧客の数によっては対応しきれません。復活の可能性がもっとも高い顧客にターゲットを絞るなど、効率的に進める必要があるでしょう。

蓄積したデータを今後の「離反防止」や「休眠顧客の掘り起こし」に活かす

休眠顧客の復活にはさまざまなアプローチ方法がありますが、どのような方法をとったとしても、顧客の反応をデータとして蓄積することが大切です。「どんな顧客が、どのアプローチ方法に対してどう反応したか」というデータを集め、今後の離反防止や休眠顧客に活かしましょう。そのために、CRMを有効活用してください。

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