事業にはヒト、モノ、カネの3つの要素が不可欠だといわれますが、なかでも企業の成長段階に大きな影響を及ぼすのが「ヒト=人的リソース」ではないでしょうか。人的リソースの不足、いわゆる人手不足が企業の成長を阻害するケースは少なくありません。

この記事では、そうした人的リソースの不足解消に際して強力な味方となる「BPO」について解説します。特にマーケティングにおけるBPOのメリットについて詳しくご説明しましょう。

BPOとは

BPOはBusiness Process Outsourcing(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)の頭文字を並べたもので、企業内で遂行される管理業務など、その企業のコアビジネスではない業務プロセスの一部を外部の業者に委託することをいいます。

冒頭でも述べたように、企業が事業を継続・拡張していくためには人的リソースの確保が必須です。

例えば、新規顧客獲得に力を入れるためには営業担当者が必要ですし、顧客が増えれば増えたで、そのフォローやバックオフィス対応にも人手がかかるようになります。新規事業を立ち上げるにも、それなりの人員が必要となるでしょう。

しかし、必要なら人を雇えばそれでよいのかというと、事はそれほど簡単ではありません。正社員を雇用すればコストがかかりますし、いったん雇用してしまえば、たとえ想定通りに事業が成長しなかったとしても、簡単に解雇することはできません。

BPOを利用するメリット

こうした場面で強い味方となるのがBPOです。社内のリソースだけでは回しきれない業務をアウトソーシングすることで、従業員の負担が軽減し、よりコアな業務に注力することが可能となります。

アウトソーシング可能な業務は多岐にわたりますが、BPOサービスが利用されるケースが多いのは、バックオフィス対応やコールセンター業務、物流、データ処理やデータプリントといったルーチン化可能な作業や、データ分析やアプリケーション開発、サプライチェーン・マネジメントといった専門的知識・技術を必要とする業務の分野だといえるでしょう。

BPOの規模もケースバイケースですが、国内では大手化学メーカーである花王株式会社(以下、花王)のBPO事例が知られています。この事例では、花王で処理される年間120万件の経費支払用の伝票処理がアウトソーシングされました。このBPOにより、導入当時、2010年から2014年までの5年間で18億円のコスト削減効果が見込まれたといいます。

出典:コスト半減は当たり前!バックオフィス革命 – 4カ月で移管、5年で18億円削減/花王:ITpro

マーケティングにおけるBPOのメリット

最近ではBPOの一環としてマーケティング業務をアウトソーシングする企業も少なくありません。

近年、企業のマーケティングには大きな変革の波が訪れています。Web技術の発達やスマートフォンの普及、SNSユーザーの増加やECビジネスの市場規模拡大などを背景として、マーケティングにも高度な専門性が求められるようになりました。マーケティングは企業の収益を左右する業務であり、自社内でノウハウを蓄積したいという会社も多いかもしれません。しかし、次々と新たなマーケティング手法が生まれる現在のビジネス環境においては、「先進技術を駆使した効率的なマーケティングを社内のリソースのみで行うことは難しい……」という企業も少なくないでしょう。

マーケティング業務をアウトソーシングした場合、他の業務のBPOと同じように、「従業員の負担が軽減し、他の業務に注力することが可能になる」といったメリットも得られますが、そのほかにも次のようなメリットが期待できます。

専門性の確保

上述のとおり、近年マーケティングにおいてはさまざまな手法が用られる時代になりました。そうした手法を単独で、または組み合わせながら効果的なマーケティングを行うには、専門的な知識が必要です。

そうした知識を持つ専門スタッフを擁する企業にアウトソーシングを依頼すれば、専門性を活かした高度なキャンペーンの実現が可能になるでしょう。例えば、複数のメディアでキャンペーンを展開する「メディアミックス」や「クロスメディア」、オンラインからオフライン(またはその逆)に消費者を誘導する「O2Oマーケティング」、あるいは、あらゆる流通チャネル・販売チャネルを統合する「オムニチャネル」といった施策について相談することができます。

そのほかにも、自社のスタッフだけでは思いつかなかったことをアドバイスしてもらえるなど、専門知識のある会社ならではのサービスが期待できるでしょう。

一貫性の実現

マーケティングのアウトソーシングを請け負う会社は、それぞれのメディアやチャネルについて知識が豊富で、どのようなキャンペーンにどのメディアやチャネルを使えばよいかのノウハウを蓄積しています。

例えば、クロスメディア施策においては、新聞・雑誌やテレビなどの「ペイドメディア」、自社のWebサイトなどで情報を発信する「オウンドメディア」、SNS やブログなどの「アーンドメディア」の連携で、ユーザーとのコミュニケーションを活性化させるといった提案をしてもらうことができますが、このとき大切なのは「一貫性の実現」です。

それぞれのメディアやその読者層・視聴者層に合わせて、発信するメッセージをある程度アレンジすることは大切ですが、マーケティング活動を通じて企業ブランディングを成功させるためには、それらのメッセージに強い一貫性を持たせることが必要です。マーケティングのBPOを専門に請け負う企業であれば、そうしたブランディングを実現するためのノウハウを蓄積しています。しかし例えば、自社内でそれぞれのメディアを別々の部門やスタッフが担当することになった場合、社内コミュニケーションが取りにくい、統括部門がない、といった理由で、うまくいかないこともあるかもしれません。

業務の迅速化

マーケティングのアウトソーシングで期待できるもう1つのメリットが「業務の迅速化」です。専門知識を備えた委託先であれば、マーケティング活動のデジタル化や、Webユーザーや顧客のデータの活用・分析により、効率的にプロモーションを行う施策の提案が可能です。そうした施策を実施することにより、セールスプロモーションやその他のマーケティング業務のスピードアップも可能になるでしょう。

また、販促物の在庫や配送を統合的に管理するシステムなど、作業の効率化を可能にする仕組みを提案してもらえる場合もあります。そうしたシステムを利用すれば、販促物の迅人的リソース.jpg速な出荷が可能になり、納期の短縮も期待できるでしょう。

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コストの低減

業務の迅速化のほかに、コストの低減も期待することができます。例えば、プロモーションを行う際に、店頭の施策とWeb上の施策をそれぞれ別の会社に依頼するよりも、すべて一括でアウトソーシングしたほうが、効率が高まって、結果的にコストを抑えられる場合があるでしょう。

また、自社内ですべてのマーケティング活動を行おうとすると、スタッフを新たに教育する必要も生じ、かえってコストがかかる可能性もあります。

BPOで効果を上げるために

このように、BPOを利用することで一部の業務をアウトソーシングし、比較的短期間でリソース不足を解消できる可能性がありますが、その一方で、アウトソーシングにはデメリットも存在します。

社内の業務を外部に委託するということは、見方を変えれば社内のノウハウが外部に流出するということでもありますし、コントロールの難しい社外の人員に業務を任せれば、情報流出のリスクも高まります。業務知識の乏しい外部の人員に作業を任せることで、業務品質の低下を招くおそれもあるでしょう。

また、先の花王の事例のように大規模なBPOを行う場合は、導入に際してかかるコストも馬鹿になりません。業務の分析やマニュアルの作成、人員のトレーニングなど、金銭的にも時間的にも多大なコストが発生します。

BPOを利用する際には、アウトソーシングにまつわるこうした問題を正しく理解し、あらかじめメリットとデメリットを吟味したうえで導入を検討することが大切です。現状の業務を可視化し、具体的にどの部分に人的リソース不足の問題があるのか、どの業務をアウトソーシングすればもっとも高い効果が得られるのかを念入りに検討したうえで導入に踏み切るのが、BPOを成功させるためのひとつのポイントとなるでしょう。

マーケティングのBPOで高い効果を得るには?

マーケティングのBPOで効果を上げるためのポイントも、基本的には上述のとおりとなりますが、特に次のような点には注意したいところです。

  • 委託先に任せきりはNG

マーケティングの業務をアウトソーシングする際には、つねにプロジェクトの進捗状況を自社内でもしっかり把握するようにしましょう。委託先に任せきりで、自社の担当者がプロモーションの全体像をつかめていない……といった状況に陥ると、何かトラブルが起こったときや、プロジェクトの方向性をすぐに修正する必要が出てきたときに、迅速な対応ができない可能性があります。

  • コミュニケーションが取りやすい会社に委託

マーケティングは生き物です。ビジネス環境の変化に応じて、方法やタイミングを変更する必要性が出てくる場合があります。そうしたときに、委託先の担当者とコミュニケーションをうまく取れなければ、企業ブランディングの成功が望めなくなってしまう可能性も出てきます。よって、経験豊富でコミュニケーション力のある会社を選ぶとよいでしょう。

アウトソーシングは戦略的に

以上、この記事ではBPOの概要、および効果的な導入方法について解説しました。

BPOは人的リソース不足を救う強力な武器になり得ますが、人手が足りないからといって、無計画にBPOを利用するのは賢いやり方ではありません。社内の業務を総合的かつ多角的な視点で見据え、リスクを抑えつつもっとも高い効果の上がる利用方法を検討するよう心がけましょう。

<2018年9月更新>

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