販促施策を企画する際には、インパクトの強いオファーでターゲットに訴求したいところです。しかし、行き過ぎたオファーはときとして「景表法」に抵触し、措置命令を受けるといった不本意な結果を招いてしまう恐れがあるのをご存じでしょうか?

この記事では販促担当者がぜひ押さえておきたい「景表法」の基礎について、ポイントを解説します。

そもそも景表法って?

景表法は正式には「不当景品類及び不当表示防止法」といい、一般には「景品表示法」の名で知られています。

商品やサービスを実際よりも良いものに見せかけるような表示をしたり、過大な景品を付けて販売したりするような行為がまかり通ると、消費者が品質の良くない商品・サービスを買うように誘導されてしまう恐れがあります。消費者がそうした不利益を被るのを避けるために設けられたのが、この景表法です。

景表法制定の背景には、昭和20年代ごろから景品付きで商品を販売するケースが増加し始めたことがあるといわれています。その後、昭和35年に鯨肉の缶詰を牛肉大和煮として販売した「ニセ牛缶事件」が起こり、これをきっかけとして昭和37年に同法が制定されました。

景表法の概要

景表法の内容は、大きく分けて「不当な表示の禁止」と「過大な景品類の提供の禁止」の2つです。

  1. 1.不当な表示の禁止
    1つ目は「不当な表示の禁止」で、商品やサービスの品質や価格について、消費者の誤認を招くような不当な表示を禁止するもの。チラシやパンフレット、ポスター、Webサイトなどに、商品やサービスが実際よりも著しく優良、または有利であると見せかける表示を行うことを禁止しています。
    例えば、カシミヤが50%しか使用されていないのに「カシミヤ100%」と表記する、「翌日配達」と明記されているのに商品が翌日に届かない地域もある、といったものが景表法に抵触します。また、メーカー希望小売価格が15,000円であるのに「メーカー希望小売価格20,000円」と表示する、一度も20,000円で販売したことがない商品やサービスについて「通常価格20,000円を本日限り10,000円」と表示するなどの、不当な二重価格表示も景表法による取り締まりの対象となります。
  2. 2.過大な景品提供の禁止
    2つ目は「過大な景品提供の禁止」で、商品やサービスの購入に付随して過大な景品を提供するのを禁じるもの。消費者が景品を目当てに商品・サービスを選んでしまい、結果として質の良くない商品を買わされるといった不利益を被ることを防ぐのを目的としています。購入者に抽選で提供されるもの、来店者に提供される粗品、商店の福引の景品などがこの法律の対象で、懸賞や景品の種類と取引価額によって景品の最高額や総額の限度が定められています。
    例えば、購入者にもれなく提供する総付景品の場合、取引価額が1,000円未満であれば景品の最高額は200円で、1,000円以上なら取引価額の20%が上限です。また、商品の購入者にくじを引かせて景品を提供する一般懸賞の場合、

①取引価額が5,000円未満であれば景品の最高額は取引価額の20倍、5,000円以上なら100,000円

②取引価額にかかわらず、懸賞に係る売り上げ予定総額の2%

が上限となっており、①②両方の条件を満たす必要があります。

景表法に違反するとどうなるの?

では、景表法に違反した場合、どのような罰則があるのでしょう?

通常、景表法違反が疑われる場合、消費者庁が関連資料の収集や事業者への事情聴取などの調査を行い、違反行為が認められた場合は、弁明の機会を与えたうえで措置命令が出されます。具体的には、違反行為の差し止め、再発防止策の実施、一般消費者への周知徹底、今後同様の違反行為を行わないことなどを命じる行政処分が実施されることになります。

また、措置命令とともに課徴金納付命令が出されることもあり、対象商品・役務の売上額に3%を乗じた額の納付を命じられることもあります。

なお、措置命令に違反した場合には、その者に対して2年以下の懲役又は300万円以下の罰金、法人やその代表者などにも3億円以下の罰金が科せられることになります。

※各都道府県知事にも、「景表法に違反する行為に対して、行為の取りやめや訂正広告などを指示できる」といった権限が与えられています。

景表法に違反しないために

このように、違反した場合は大きなリスクを負うこともある景表法ですが、違反しないようにするにはどのような心掛けが必要なのでしょう?

景表法の怖いところは、「うっかり違反してしまう」という失敗があとを絶たないという点です。「鯨の肉を牛肉と偽って売る」といった確信犯的なケースは論外ですが、商品に付ける景品の金額の上限を超過するようなミスは、景表法を知らなければうっかり犯してしまうこともあるでしょう。しかし、たとえ故意ではなかったとしても、措置命令の対象となり得ます。

景表法に違反しないためには、本記事でご紹介したような景表法の基本を正しく理解し、どのような場合に違反となり得るかを把握しておくことが大切です。そのうえで、「これは危なそうだな」と感じたら、プロモーションを行う前に消費者庁のWebサイトを確認してチェックするよう心掛けましょう。

なお、消費者庁のWebサイトには、過去の違反事例も多く公開されていますので、機会があればぜひご一読ください。同業他社の事例を研究しておけば、未然に危険を防ぐことも可能となるはずです。

■参考

■注意

本記事は、作成時点での法律や判例に基づいておりますので、将来的に法令や判例が変更される可能性があります。また、本記事は一般的な情報であり、法的または専門的なアドバイスを目的にするものではありません。

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